アイデアはある。でも、どうすればいいかわからない。この状態で止まっている人を、たくさん見てきた。

「高齢者向けのデジタルサポートサービスをやりたい」「地域の食品メーカーと組んで、直販の仕組みを作りたい」「自社の技術を使って、BtoBのサブスクを作りたい」——こういったアイデアを持っている人は、実は多い。問題は、そこから何をすればいいかが、見えないことだ。

この「アイデアがある」と「実際に動き出す」の間に、深い溝がある。多くの新規事業は、この溝で止まる。

アイデアと仮説は、別物だ

「高齢者向けデジタルサポートをやりたい」はアイデアだ。でも、これは検証できない。何が正しいかを確かめる手立てがない。

仮説はこうなる——「独居の70代女性は、スマートフォンの操作を近くで教えてくれる人がいないことに不便を感じており、月2回・1時間の訪問サポートなら月額3,000円まで払える可能性がある」。具体的で、検証できる形になっている。「独居の70代女性」「スマートフォン操作」「訪問サポート」「月2回・1時間」「月額3,000円」——それぞれの前提が、合っているかどうかを確かめられる。

アイデアは夢だ。仮説は問いだ。問いになって初めて、答えを探せる。

なぜ仮説にするのが難しいか

アイデアを仮説に変えるのが難しい理由は、具体的にしていくにつれて「外れるかもしれない」という恐怖が増すからだ。

アイデアの段階では、まだ何も否定されていない。「高齢者向けデジタルサポート」という言葉は広く、反証もできない。でも、「70代女性、訪問サポート、月3,000円」まで具体化すると、それが間違っていた場合にはっきりわかってしまう。

その怖さから、アイデアを曖昧なまま温め続けることがある。「まだ準備できていない」「もう少し調べてから」。でも、調べても、外れるかどうかは市場に聞かないとわからない。準備が完璧になることは、ない。具体化して外れることは、失敗ではない。学びだ。最初から全部当たる人間はいない。早く外れを見つけることが、正しい進み方だ。

仮説を作る三つの問い

アイデアを仮説に変えるには、三つのことを決める必要がある。誰が、何に困っていて、どういう解決策なら対価を払うか、だ。

「誰が」は、できるだけ具体的に絞る。「高齢者」ではなく、「都市部に住む独居の70代女性」。ターゲットが広ければ広いほど、何もわからない。絞ることで、その人たちに実際に会いに行ける。

「何に困っているか」は、自分の仮定を一旦疑う。「スマホが使えなくて困っている」と思っていたが、実際に話を聞くと「困ってはいるが恥ずかしくて誰にも言えない」という感情面が本質だった、ということはよくある。困りごとの表面ではなく、その奥にある感情や動機を掘ることが重要だ。

「どういう解決策なら対価を払うか」は、最後に来る。解決策を先に決めてしまうと、問題に合わせて解決策を作るのではなく、解決策に合わせて問題を歪めてしまう。順番が大事だ。

最初の検証は、小さくていい

仮説ができたら、次のステップは検証だ。ここでも、大きく動く必要はない。最初の検証は、実際に「誰が」に当てはまる人と話すことだ。プロダクトもサービスも、まだなくていい。仮説をもとに作った簡単な説明資料と、相手の反応を聞く準備だけあればいい。「こういうことを考えているのですが、どう思いますか」という対話が、最初の検証だ。

10人と話せば、仮説のどこが合っていてどこが外れているかが、かなり見えてくる。この10人との対話が、後の事業設計に大きな差をもたらす。

動ける状態に変えることが、最初の仕事

「アイデアがあるが、どうすればいいかわからない」という状態は、アイデアを仮説に変えることで、「動ける状態」になる。問いが明確になれば、答えを探しに行ける。

この変換プロセスは、初めてやる人間には難しい。自分のアイデアに対して、意図的に批判的な問いを向け続けることが必要で、それには訓練がいる。経験のある人間が横にいると、この変換が速くなる。大事なのは、アイデアの良し悪しではない。アイデアを動けるものに変える力が、新規事業を前に進める。

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アイデアを、動ける仮説に変える。

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