新規事業は、始める難しさより続ける難しさの方が大きい。

中小企業では、新規事業の担当者が既存業務を抱えたまま兼任するケースがほとんどだ。「時間も人も足りない」という状態が続くと、どちらも中途半端になって終わる。それは意志の問題ではなく、設計の問題だ。

この記事では、既存事業と新規事業を両立させるためのリソース配分の考え方を整理する。

兼任体制で新規事業が失速する3つのパターン

新規事業が動かなくなる理由は、だいたい次の3つに集約される。

  • 緊急度の高い既存業務に引っ張られる
  • 新規チームに「専任で動ける人」がいない
  • 予算の使い方に序列がない

特に1番目が根深い。既存事業には顧客がいて、クレームも納期も締め切りも実際に来る。一方、新規事業の締め切りは自分で決めたものだ。毎週「来週こそは」と先送りされ、気づけば3ヶ月が経過している。

この構造を変えるのは、気合いではなく仕組みだ。

原則1:新規事業の時間は「ブロック」として先に確保する

「余った時間でやる」は機能しない。既存事業に余った時間など、永遠に生まれない。

週5時間なら週5時間を、カレンダーに固定枠として入れる。この枠には既存業務の打ち合わせも問い合わせ対応も入れない。それだけのルールで、実際に動く時間は生まれ始める。

最初から大きくとる必要はない。週に半日でも、専用の時間があるかどうかで状況は変わる。問題は量より、「この時間は新規事業以外に使わない」という合意を社内で作れるかどうかだ。

原則2:新規担当者を「免除する業務」を明示化する

時間を確保すると決めても、担当者が既存業務の「万能要員」であり続けると機能しない。

必要なのは、何を免除するかを明示することだ。週次の定例会議、日常の問い合わせ一次対応、特定の顧客フォロー——「これは別の人が対応する」と決めた業務のリストを作る。このリストがないと、「急ぎだから今日だけ」が毎日続く。

免除リストを作る際は、担当者本人ではなく上長が決める方がうまくいく。担当者自身が「自分だけが知っている業務」を手放すのは心理的に難しい。外から決める方が、双方に動きやすい。

原則3:予算はフェーズに紐付けて割り当てる

「年間◯百万円を新規事業に使う」という総額管理では、予算を使いにくい。何にいくら使うかの判断のたびに承認が必要になり、担当者が動けなくなる。

フェーズ別の割り当てに変えると動きやすくなる。

  • 仮説検証フェーズ:顧客インタビュー・試作品・小規模テスト用に◯万円まで担当者判断で使える
  • MVP構築フェーズ:外注・ツール費・人件費を含めて◯万円まで
  • 拡大フェーズ:別途稟議

このように設計すると、担当者が動くたびに承認を取る必要がなくなる。承認コストが下がると、仮説検証のスピードが上がる。

外部人材を使う場合の情報共有設計

内部リソースだけでは回らない場合、業務委託や外部パートナーを活用する選択肢がある。ただし、社外メンバーが増えると情報共有の複雑さが増す。

新規事業には「作る工程」と「支える工程」の2種類がある。プロトタイプや提案資料を作る段階は、一人の人間が全体を把握して手を動かす方が速い。一方、経理処理や顧客への定型対応などは、属人化せずに誰でも対応できる状態にしておく方が安定する。

外部メンバーに入ってもらう場合は、この「作る工程」か「支える工程」かを最初に整理しておくと役割分担が明確になる。どちらの工程なのかが曖昧なまま依頼すると、成果の期待値がずれやすい。

社内外のメンバーが混在するチームでは、タスクの進捗を全員が確認できる状態を作ることが重要になる。メールや口頭のやり取りだけでは、外部メンバーが「今何を待たれているか」を把握しにくい。タスク管理ツールで社内外の境界線を下げることで、進行のロスを減らせる。

よくある質問

新規事業に何割のリソースを割くべきですか?

業務時間全体の20〜30%が一つの目安とされているが、フェーズによって大きく異なる。仮説検証段階は週数時間でも動けるが、MVP構築段階以降は専任に近い体制が必要になる。「今どのフェーズか」を確認してから時間配分を決める方が、総量で決めるより実態に合いやすい。

経営者自身が新規事業を兼任しています。どこから手をつければいいですか?

週に1回、2〜3時間の「新規専用の枠」をカレンダーに入れることが最初の一手になる。この時間に既存の問い合わせ対応や定例会議を入れない、とだけ決める。それだけで使える時間の実感が変わる。その枠を守れるようになったら、免除する既存業務を一つ決める、という順で広げていく。

担当者が一人で、チームをどう作ればいいかわかりません。

最初から正式なチームを組む必要はない。「この部分だけ一緒に考えてほしい」と声をかけられる社内の人間を1人作ることから始める。週1回30分のブレスト相手がいるだけで、一人で抱え込む状況は変わる。外部の業務委託やアドバイザーも、最初は単発で試してから継続を判断すれば良い。

まとめ

既存事業と新規事業の両立は、個人の頑張りで乗り切ろうとすると必ず限界が来る。時間をブロックとして確保し、免除する業務を決め、予算をフェーズに紐付ける——この3つを設計として決めることが、新規事業を動かし続けるための土台になる。

リソース配分は一度決めたら終わりではない。フェーズが変わるたびに見直す前提で設計しておくことが、長く続けるためのコツだ。

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