結論を先に。 新規事業の撤退が決まった後、チームメンバーの再配置がうまくいかないのは、撤退の意思決定と、メンバーへの伝え方・異動先の設計を別々の問題として扱ってしまうためです。撤退の判断自体は基準に基づいて冷静に下せても、そこで頑張ってきたメンバーにとっては「自分たちの努力が否定された」と感じられやすく、伝え方を誤ると優秀な人材の離職につながります。撤退の判断と同時に、メンバー一人ひとりの次のキャリアをどう設計するかを並行して検討することが重要です。この記事では、撤退後の再配置がうまくいかない理由と、モチベーションを損なわない進め方を整理します。
なぜ撤退後の再配置はうまくいかないのか?
理由は大きく3つあります。
- 撤退の伝え方が「失敗」を強調してしまう:撤退を事業の失敗として伝えると、そこに携わったメンバー自身の頑張りまで否定されたように受け取られ、モチベーションの低下を招きます。
- 異動先の検討が撤退決定後に後回しになる:撤退の意思決定に時間を使い切ってしまい、メンバーの異動先を考え始めるのが決定後になると、メンバーは宙ぶらりんな状態で不安を抱えることになります。
- 新規事業で得たスキルや経験が既存部署で評価されにくい:新規事業特有の経験(仮説検証や不確実性への対応力など)が、既存部署の評価基準にうまく翻訳されず、メンバーが「元の部署に戻ってもキャリアが後退する」と感じてしまうことがあります。
現場での実感。 新規事業の撤退についてご相談を受けると、多くの場合「事業をどう畳むか」の話が先行し、「メンバーをどうするか」は後回しになりがちです。しかし実際には、撤退の話をメンバーに伝えるタイミングと、次の異動先の提示がどれだけ近いかによって、その後のモチベーションが大きく変わります。撤退の意思決定と異動先の検討を同時並行で進めるだけで、メンバーの受け止め方はかなり変わります。
再配置を後回しにするとどうなるか?
再配置の検討を後回しにすると、撤退が決まってから異動先が決まるまでの間、メンバーは目的の見えない状態で日々を過ごすことになり、その間に転職活動を始めてしまうこともあります。特に、新規事業に自ら志願して参加したような意欲の高いメンバーほど、次の挑戦の機会が見えないことに敏感で、離職のリスクが高くなります。優秀な人材を失うことは、事業撤退そのものよりも大きな損失になりかねません。
モチベーションを損なわない再配置には、何が必要か?
すべてのメンバーに同じ異動先を用意する必要はありません。まず押さえるべきは、撤退の伝え方と異動先の提示を切り離さないという発想です。
撤退の理由を「学び」の言葉で伝える
何が検証でき、何が分かったのかという成果を明確に伝えることで、撤退を単なる失敗ではなく、意味のある検証プロセスの結果として位置づけられます。
異動先を撤退の発表と同時、または直後に提示する
異動先が決まっていない状態で発表するのではなく、次の配置先の見通しをできるだけ早く示すことで、メンバーの不安を最小限に抑えられます。
新規事業で得た経験を、異動先での役割に明示的に接続する
仮説検証の経験や不確実性への対応力が、異動先の業務でどう活きるかを具体的に言語化して伝えることで、キャリアが後退したという印象を防げます。
再配置がうまくいくケースといかないケース、何が違う?
| 観点 | うまくいかないケース | うまくいくケース |
|---|---|---|
| 撤退の伝え方 | 失敗として伝えられる | 検証で得られた学びとして伝えられる |
| 異動先の提示タイミング | 撤退決定後に検討が始まる | 撤退の発表と同時か直後に示される |
| 経験の扱われ方 | 評価基準に翻訳されず埋もれる | 異動先の役割に明示的に接続される |
撤退が見えてきた段階で確認すべきことは?
- 撤退の可能性が見えた時点で、異動先の候補を並行して検討し始める:撤退の意思決定が固まってから動き出すのではなく、可能性が見えた段階で人事部門や関連部署と情報共有を始めます。
- メンバーごとに新規事業で得た経験を棚卸しする:全員一律の異動先を用意するのではなく、一人ひとりが得た経験や強みを踏まえて、適した異動先を個別に検討します。
- 撤退の発表と異動先の提示を、できるだけ近いタイミングにそろえる:発表から異動先決定までの期間が空くほど、メンバーの不安と離職リスクは高まります。
よくある質問
Q. 異動先が決まらないまま撤退を発表してもいいですか?
A. できるだけ避けるべきです。異動先の見通しが立たない場合でも、いつまでに方向性を示すかという時期だけでも先に伝えることで、メンバーの不安をある程度和らげられます。
Q. 新規事業のメンバーが元の部署に戻りたがらない場合はどうすればいいですか?
A. 元の部署に戻ることだけを選択肢とせず、新規事業で得た経験が活きる他の部署やポジションも含めて検討することをおすすめします。
Q. 撤退の理由をメンバーにどこまで詳しく伝えるべきですか?
A. 経営判断の詳細をすべて伝える必要はありませんが、何を検証し、何が分かったのかという事実は具体的に伝えることで、メンバーが自分たちの取り組みの意味を理解しやすくなります。
Q. まずは何から始めればいいですか?
A. 現在の新規事業メンバー一人ひとりが、この事業を通じてどんな経験・スキルを得たかを棚卸しするところから始めてください。その整理が、撤退が決まった際の異動先検討の土台になります。
発信:株式会社オルアナ(新規事業開発・システム開発・AIエージェント開発・バックオフィス業務支援)