提案書を捨てた

15年間、私はシステム開発の商談で提案書を作り続けてきました。ヒアリングをして、課題を整理して、解決策を文書にまとめて、次の打ち合わせで説明する。それが「丁寧な仕事」だと思っていました。

ある時期から、それをやめました。

今は、最初に話を聞いたら、次に会う時には「そのお客様の業務に合わせて作ったシステムの動くプロトタイプ」を持っていきます。画面を触りながら、「こういうことですか?」「ここは違いますか?」と確認していく形で商談を進めます。

「思ったのと違う」をなくす方法

提案書形式の商談には、構造的な問題があります。文字と図で説明されたシステムのイメージは、作る側と使う側で一致しません。「はい、わかりました」と言っても、完成物を見て「あ、こういうものじゃなかった」となる。これは担当者の理解力の問題ではなく、文書というメディアの限界です。

動くものを見せると、話が変わります。「これは使う。でもこっちは違う」「この画面は毎日使うけど、もっとシンプルにしてほしい」という具体的なフィードバックが出てくる。双方の認識がずれたまま契約に進まないから、後になって「聞いてなかった」が起きない。

この進め方が成立するのは、AIによって「提案フェーズ」と「実装フェーズ」の境界が溶けてきたからです。以前は、動くものを作るには時間もコストもかかりすぎて、商談の場には間に合わなかった。今は、話を聞きながらその場でプロトタイプの骨格を組み立てることができます。

経験とAIが組み合わさった時に起きること

商談の場で、お客様の業務の話を聞いていると、過去の案件と重なる構造が見えてくることがあります。「この確認フローは、あの会社の承認プロセスと同じだ」「ここを変えれば、工数が3割以上減る」——言葉になる前に、解決策の輪郭が浮かんでくる。

その輪郭をAIに渡すと、商談が終わる前には動くものになっています。

これは効率化の話ではありません。仕事の進め方そのものが変わった、という話です。プロトタイプを見ながら一緒に考えるプロセスは、依頼者が「自分たちが本当に欲しいもの」を発見するプロセスでもあります。提案書では、それが起きません。

私たちと話す時間は、要件を伝えるための時間ではなく、一緒に解決策を見つけていく時間です。その進め方に共感してくださる方と、仕事をしています。

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