「言われた通りに作りました」は、なぜ失礼なのか
システム開発の現場で長く仕事をしていると、あるパターンに繰り返し出会います。要件通りに作った。テストも通った。納品もした。なのにシステムが使われない。
責任の所在が問われる場面で、「言われた通りに作りました」と言う開発会社がいます。それは事実かもしれません。でも私たちは、それをプロの言葉だとは思っていません。
依頼者が持ってくる要件書や言葉は、その人が一生懸命考えた「仮の答え」です。業務の中にいる人間には、自分たちの非効率が見えにくい。毎月3日かかっている請求書処理も、担当者が休むと止まる承認フローも、「ずっとこうだったから」という理由で当たり前になっている。だから「困っていることは?」と聞いても「特にないです」と返ってくる。
扇風機の性能を限界まで上げても、エアコンは生まれません。依頼された解決策を精度高く実装することと、本当に必要なものを作ることは、別の仕事です。
言葉の奥にある「痛み」を見ることがプロの仕事
私たちは商談の場で、依頼の言葉よりも業務の流れを聞くことを優先します。何をどんな順番で、誰がやっているか。どこで止まるか。誰しか知らない手順はあるか。
そこを丁寧に聞くと、本人たちが言語化していなかった問題が出てきます。「この作業、実は毎回手で転記しているんです」「この確認、担当者が来るまで誰も判断できないんです」。そういう言葉が出てきたとき、私たちはその下にある痛みを解決するものを作ることを考えます。
これは依頼を無視することではありません。むしろ逆です。依頼者の言葉を表面で受け取るのではなく、その言葉が生まれた背景まで理解してはじめて、依頼者が本当に欲しいものに応えられる。それが私たちの考えるプロの仕事です。
「あなたの言う通りに作ります」という提案は安全ではない
システム開発の発注者にとって、「要望を全部聞いてくれる会社」は一見安心に見えます。でも考えてみてください。医師に「飲みたい薬を言えば出してもらえます」と言われたら、それは良い医師でしょうか。
依頼者が正しい解決策を知っていれば、そもそも外部の専門家は必要ありません。外部に頼む理由は、自分たちでは見えないものを見てもらい、自分たちには出せない選択肢を提示してもらうためです。
私たちが最も重視するのは、依頼者が「思ったのと違う」と感じないシステムを作ることです。そのためには、要件書に書かれた言葉より深いところに踏み込む必要があります。踏み込む準備がある開発会社かどうか、それが発注先を選ぶ上で重要な基準の一つだと考えています。
読んで気になることがあれば、まず話だけでも。
まず、業務を聞かせてください →