資金繰りに不安を感じる経営者のほとんどは、「資金が足りない」のではなく「資金の動きが見えていない」状態にある。まず見るべき3つの数字を把握するだけで、不安の正体が具体的な課題に変わる。
なぜ資金繰りの不安はなくならないのか
売上は立っているのに、なんとなく不安だ。月末が近づくと通帳を確認してしまう。この状態が続く経営者には共通点がある。資金繰り表を持っていないか、あっても常に古い状態のままになっているケースがほとんどだ。
資金繰りの不安は「将来の資金の動きが見えない」ことで生まれる。逆に言えば、3ヶ月先の資金着地が見えていれば、不安は「課題」に変わり、打てる手が具体的になる。
まず見るべき数字①:売掛サイト(回収までの日数)
売掛サイトとは、売上が立ってから実際に入金されるまでの平均日数のことだ。
計算式:売掛金残高 ÷ 月次売上 × 30日
たとえば売掛金残高が300万円、月次売上が200万円なら、売掛サイトは45日。つまり売上が立ってから45日後に入金されることになる。この数字が大きいほど、売上があっても手元に資金が残りにくい構造になっている。
改善のポイントは、主要取引先の支払い条件を見直すことだ。月末締め翌月末払いを月末締め翌月15日払いに変えるだけで、売掛サイトは約15日短縮できる。
まず見るべき数字②:買掛サイト(支払いまでの日数)
買掛サイトは、仕入れや外注費が発生してから実際に支払うまでの平均日数だ。
計算式:買掛金残高 ÷ 月次仕入れ・外注費 × 30日
売掛サイトと買掛サイトの差が、資金繰りの余裕度を決める。売掛サイト45日、買掛サイト30日なら、15日分の資金を常に立て替えていることになる。売掛サイトを縮めるか、買掛サイトを延ばすか、どちらかが資金繰り改善の直接的な打ち手になる。
まず見るべき数字③:固定費カバー率(何ヶ月分の固定費を賄えるか)
固定費カバー率は、現在の手元資金で何ヶ月分の固定費(人件費・家賃・リース料など)を支払えるかを示す指標だ。
計算式:現金・預金残高 ÷ 月次固定費
たとえば現金残高が600万円、月次固定費が200万円なら、固定費カバー率は3ヶ月。売上がゼロになっても3ヶ月は運営できることを意味する。この数値が2ヶ月を下回ると、資金ショートのリスクゾーンに入ると考えたほうがいい。
3つの数字を把握するだけで何が変わるか
売掛サイト・買掛サイト・固定費カバー率の3つを把握すると、「なんとなく不安」だった状態が「ここが課題」という状態に変わる。課題が見えれば、打ち手が出てくる。
- 資金繰り悪化の7つのサイン|経営者が早めに気づくためのチェックリスト
- 資金繰り表の作り方と読み方|3ヶ月先を先読みする経営ツールの基本
- 売掛サイトが長い → 主要取引先の支払い条件を交渉する
- 買掛サイトが短い → 仕入れ先との支払い条件を見直す
- 固定費カバー率が低い → 固定費の見直しまたは入金スピードを上げる施策を打つ
資金繰り改善の第一歩は、数字を揃えることだ。大きな投資をする前に、まずこの3つの数字を計算してみることをお勧めする。
オルアナの視点:見えれば動ける
私たちが経営者から相談を受ける際、最初にやることはこの3つの数字の確認だ。これだけで「なぜ資金が不安なのか」の答えが出ることが多い。資金繰り問題の多くは、資金そのものの問題ではなく「構造が見えていない」問題だ。見えれば動ける。そのための最初の一歩が、この3つの数字にある。
よくある質問
- Q. 売掛サイト・買掛サイトはどのくらいが適正ですか?
業種によって異なりますが、売掛サイトと買掛サイトの差が小さいほど資金効率は良くなります。理想は売掛サイト ≤ 買掛サイト(入金が先、支払いが後)の状態です。 - Q. 資金繰り表をエクセルで作っていますが、何が問題ですか?
エクセルが問題なのではなく、「更新が手作業で常に1〜2ヶ月遅れている」状態が問題です。リアルタイムで見えていない資金繰り表は、経営の意思決定に使えません。 - Q. 税理士に資金繰りを相談しても、あまり対応してもらえません。
税理士の主な役割は過去の数字の記録(記帳・申告・決算)です。未来の資金着地を先読みして経営判断を一緒に行う「資金繰りコンサル」とは役割が異なります。税理士を変えるのではなく、役割を補完する形が現実的です。
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