結論を先に。 事業承継を機に新規事業(第二創業)に挑む後継者が最初につまずくのは、資金や人材の不足ではなく、「先代の事業を否定しているように見える」という社内外からの視線です。後継者としては、既存事業だけでは先細るという危機感から新しい柱を立てようとしているのに、古参社員や取引先からは「今のやり方が気に入らないのか」と受け取られてしまう。この認識のズレを放置したまま新規事業を進めると、社内の協力が得られず、既存事業との軋轢だけが残ります。第二創業を成功させる鍵は、新規事業の中身そのものより先に、「既存事業を否定するのではなく、隣に新しい柱を立てる」という位置づけを社内に浸透させることにあります。この記事では、事業承継×第二創業で起きやすい失敗と、進め方の考え方を整理します。

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なぜ後継者の新規事業は社内の反発を招きやすいのか?

理由は大きく3つあります。

  • 新規事業への投資が、既存事業への評価と比較されてしまう:新しい取り組みに予算や人員を割くと、それだけで「今の事業は軽視されている」という印象を古参社員に与えることがあります。
  • 先代の成功体験を否定するメッセージに聞こえてしまう:後継者が新規事業の必要性を語る際、「このままでは立ち行かない」という危機感の伝え方次第では、先代やベテラン社員の功績を否定しているように受け取られます。
  • 後継者自身の実績づくりだと見なされる:新規事業が後継者の「自分の色を出したい」という個人的な動機に見えてしまうと、組織としての協力を得にくくなります。

現場での実感。 事業承継後の新規事業のご相談では、「新しいことをやろうとすると、古参の社員から冷ややかな反応をされる」というお話をよく伺います。多くの場合、新規事業のアイデア自体に問題があるわけではなく、それが「既存事業をどう位置づけた上での話なのか」が伝わっていないだけです。既存事業への敬意を最初に明確に示すことで、協力の得やすさは大きく変わります。

位置づけを誤ったまま進めるとどうなるか?

社内の協力が得られないまま新規事業を進めると、既存事業のリソース(人・時間・信用)を新規事業に割り当てる際に、社内から強い抵抗を受けます。結果として、新規事業は限られた人員だけで進めざるを得なくなり、スピードも質も落ちます。最悪の場合、後継者と古参社員の間に不信感が生まれ、事業承継そのものが不安定になることもあります。

「隣に柱を立てる」とは、具体的に何をすることか?

新規事業の中身を決める前に、まず位置づけと伝え方を整える必要があります。

既存事業の功績を明確に言語化し、社内外に伝える

新規事業の話をする前に、先代が築いてきた事業の価値と、それを守り続ける意思を明確に伝えることで、「否定ではなく上乗せである」という前提を共有できます。

新規事業のリソースを既存事業から奪わない設計にする

既存事業の人員・予算を大きく削って新規事業に回すのではなく、小さく始めて成果を見ながら段階的にリソースを増やす設計にすることで、既存事業への影響を最小限に抑えられます。

古参社員を「巻き込む」機会を意図的に作る

新規事業の検討段階から、意見を求める・一部の業務を任せるなど、古参社員が関与できる接点を作ることで、「蚊帳の外に置かれている」という感覚を減らせます。

否定型の伝え方と、上乗せ型の伝え方、何が違う?

観点否定型の伝え方上乗せ型の伝え方
メッセージ「このままでは立ち行かない」「今の事業を守るために、隣に柱を作る」
古参社員の受け止め方自分たちの仕事が否定された自分たちの仕事が守られている
協力の得やすさ抵抗を受けやすい協力を得やすい

第二創業を進める上で外せないポイントは?

  1. 先代・古参社員への説明を、社外への発表より先に行う:後継者の熱意が先行し、社外に発表してから社内に説明する順序になると、社内の反発が強まります。必ず社内を先に。
  2. 新規事業の成果指標を既存事業と別に設定する:既存事業の業績と同じ物差しで新規事業を評価すると、初期の小さな成果が「失敗」と見なされてしまいます。
  3. 小さな成功を可視化し、早い段階で共有する:新規事業の進捗を隠さずに共有することで、「後継者が勝手に進めている」という印象を防ぎ、徐々に社内の理解を得られます。

よくある質問

Q. 古参社員の反発が強い場合、新規事業は諦めるべきですか?
A. 反発の中身が「新規事業自体への反対」なのか「伝え方への不満」なのかを見極めることが重要です。多くの場合は後者であり、伝え方を変えることで協力が得られるようになります。

Q. 新規事業のための人員を既存事業から異動させても大丈夫ですか?
A. 可能ですが、既存事業への影響を最小限にする配慮が必要です。異動対象者本人だけでなく、周囲のメンバーへの説明も丁寧に行うことをおすすめします。

Q. 先代がまだ現役の場合、どう進めればいいですか?
A. 先代の理解と協力を最初に得ることが何より重要です。先代自身が新規事業を「息子・娘の実績づくり」ではなく「会社の将来への投資」と捉えられるよう、対話を重ねることをおすすめします。

Q. まずは何から始めればいいですか?
A. 新規事業のアイデアを詰める前に、既存事業への敬意と「なぜ隣に柱が必要なのか」を、自分の言葉で1枚の紙にまとめるところから始めてください。この言語化が、社内説明の土台になります。

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