「システム化って、大きな会社がやるものでしょう」。

社員8人の会社を経営しているその人は、少し苦笑いしながらそう言った。毎日残業しているのに、仕組みを作る余裕がない。でも「うちくらいの規模じゃ、まだ早い」と思っている。

その「まだ早い」という感覚は、実は逆かもしれない。

小さい会社ほど、一人に依存している

社員が100人いる会社と、10人いる会社を比べると、業務の集中度が全く違う。

大きな会社では、受注処理をする人、請求書を作る人、在庫を確認する人が、それぞれ別にいることが多い。一人が休んでも、他の誰かがカバーできる。マニュアルもある。

でも10人以下の会社では、一人の人間が複数の役割を担っている。「あの仕事はAさんしか知らない」という状況が、あちこちにある。Aさんが休んだ日、あるいは退職した日に、初めてそのリスクが表面化する。

業務が属人化しているとき、それを支えているのがExcelのファイルだったり、特定のスタッフの頭の中だったりする。その人がいなくなったとき、引き継ぎに数ヶ月かかる、あるいは引き継げないということが起きる。

小さい会社こそ、この問題が深刻だ。大きい会社より、一人の離脱が業務全体に与えるダメージが大きいからだ。

「人が増えてからシステム化」は遅い

「もう少し人が増えたら、システムを入れようと思っている」という話をよく聞く。

でも、人が増えるタイミングは、業務が増えてからだ。業務が増えたということは、管理する量も増えたということだ。その状態でシステムを入れようとすると、移行期間の混乱が大きくなる。

少ない業務量のうちにシステムを作っておくと、新しいスタッフが入ってきたとき、そのシステムを使って仕事を覚えることができる。業務の手順がシステムの中に組み込まれているから、「Aさんに聞かないとわからない」という属人化が起きにくい。スケールの準備は、スケールする前にしておく方がいい。

システム化で変わることと、変わらないこと

正直に書いておきたいことがある。システムを入れれば全てがうまくいく、ということはない。

変わることは、手作業の繰り返しが減ること。情報が一ヶ所に集まること。特定の人しかできなかった作業が、他の人にもできるようになること。

でも変わらないことも多い。お客さんとの関係は変わらない。仕事の品質を高める努力は変わらない。スタッフとのコミュニケーションは変わらない。判断が必要な場面では、相変わらず人間が判断する。

システムは「やることの精度と速度を上げる道具」であって、「経営そのものを変える魔法」ではない。そのことを理解した上で使うと、期待値がちょうどよくなる。

小さく始めて、業務と一緒に育てる

10人以下の会社がシステム化するとき、最初から大きなものを作る必要はない。

「一番手間がかかっている作業」から始めればいい。毎月の請求書作成に2日かかっているなら、そこから。受注の確認と在庫の照合を手作業でやっているなら、そこから。一番ボトルネックになっている部分に絞って、まず小さく作る。

小さいシステムが現場に馴染んで、スタッフが慣れてきたら、そこに機能を足していく。業務が変わったら、それに合わせてシステムも変える。最初から全部を作るより、業務と一緒にシステムを育てる方が、実態に合ったものができる。

「うちの規模じゃまだ早い」ではなく、「うちの規模だからこそ、今やっておく」という視点が、じわじわと会社の体力を上げていく。毎日の業務を支える仕組みを、少しずつ、着実に作っていくこと。それが、10人以下の会社が生き延びて、次のステージに行くための地道な方法だと思っている。

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