「今月の着地はいくらか」「半年後の資金はもつのか」という問いに、月末を待たずに数字で答えられる会社は多くありません。この記事では、着地見込みとは何か、基本の計算式、営業の商談確度から月次の着地を自動で出すシステムの考え方、現場の数字から段階的に作る進め方を整理します。
着地見込みとは何か
着地見込みとは、月末や期末など期間の終わりに、売上や利益がいくらで着地するかを、途中の時点で見積もった数字です。「着地予想」「着地予測」とも呼ばれ、目標に届くかどうかを早い段階で判断するために使います。
基本の計算式は次のとおりです。
着地見込み = 確定している売上(受注済み)+ 商談中の案件の金額 × 確度
| 項目(説明用の例) | 金額 | 確度 | 見込み額 |
|---|---|---|---|
| 受注済み | 500万円 | 100% | 500万円 |
| 商談A | 100万円 | 80% | 80万円 |
| 商談B | 200万円 | 50% | 100万円 |
| 着地見込み | 680万円 |
Excelでは、金額の列をB列、確度の列をC列とすると、=SUMPRODUCT(B2:B3,C2:C3)+受注済みの合計 で求められます。計算式のバリエーション(線形補間法・実績ペース法など)は、着地見込みの計算式と精度を上げる運用方法で解説しています。この記事では、この計算を営業の入力から自動で出す仕組みを説明します。
着地予測を瞬時に出すとは、どういうことか
営業がCRMに商談の確度を入力した瞬間に、月次の着地予測が再計算され、誰でもダッシュボードで確認できる状態を指します。月末の締めや、経理の集計を待つ必要がありません。
これが実現すると、経営判断のサイクルが変わります。
- 月次会議で着地を共有する → いつでも全員が同じ数字を見ている
- 「先月はこうだった」 → 「来月はこうなりそうだ」
- 判断のタイミングが月初・月末に偏る → 商談の動きに応じて、その都度
自社の場合に当てはめて整理したい方は、経理のシステム化・バックオフィス業務支援について相談する →
営業の商談データから、月次の着地はどう導かれるか
商談には、「確度」「金額」「想定受注時期」「想定入金時期」の4つの情報が紐づきます。これを確率的に積み上げることで、月次の着地予測が成立します。
- 確度80%の商談A(金額100万円・来月入金)→ 期待値80万円を来月に計上
- 確度50%の商談B(金額200万円・再来月入金)→ 期待値100万円を再来月に計上
- 確度20%の商談C(金額500万円・3か月後入金)→ 期待値100万円を3か月後に計上
これを全商談で積み上げると、月次の入金の期待値が見えてきます。さらに、次の3つのシナリオを並べると、経営判断の幅が広がります。
| シナリオ | 含める商談 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 最悪 | 確度80%以上の商談のみ | 最低限確保できる水準を確認する |
| 標準 | 全商談を、確度で重みづけして計上 | 通常の経営会議の基準にする |
| 最良 | 確度20%以上の商談まで含める | 上振れの余地と、必要な打ち手を検討する |
「勘の経営」と「数字の経営」を分けるもの
分けるのは、データの有無ではありません。データを、経営判断のタイミングで、正しい粒度で、全員が見られる形で示せるかどうかです。
勘の経営には、次のような特徴があります。
- 営業の感覚で「今月はいけそう」と判断する
- 月末締めの数字を見て、初めて「足りなかった」と気づく
- 経営層と現場で、見ている数字が違う
数字の経営に移るために必要なのは、営業の確度入力、即座の再計算ロジック、ダッシュボードの共有の3つです。技術的に難しい話ではありません。
着地予測システムを、現場の数字から作る5ステップ
着地予測システムは、現場の数字から逆算して設計します。経営層の理想の形から作り始めると、現場が入力しないシステムになりがちです。
- 営業が実際に使っているExcelやCRMを把握する
- 確度の段階を、営業の言葉で定義する(例:提案・見積・内示・受注)
- 確度ごとの掛け率を、過去データから割り出す
- 会計ソフトの固定費・経費のデータと突合する仕組みを設計する
- ダッシュボードを、経営層・営業・経理が同じ画面で見られる形にする
特に重要なのが、確度の定義を営業の言葉に合わせることです。経理側の理屈で確度の区分を作ると、現場の入力が形だけになります。
営業が入力したくなる設計のポイント
システムが使われるかどうかは、入力する営業にとっての負担で決まります。設計のときは、次の点を基準にします。
- CRMへの入力が、1分以内で終わること
- 確度の区分は、提案・見積・内示・受注のように4段階程度にして、迷わせないこと
- 確度を動かすと、ダッシュボードの着地予測がすぐに更新されること
- 経費や固定費の月次データは、別のソースから自動で取り込むこと
入力した結果がすぐ画面に反映されれば、営業にとっても、自分の商談が着地にどう効くかが見えるようになります。経営会議の議題も、過去の振り返りから、次の打ち手の検討へ移っていきます。
確度を主観にしないための注意点
- 確度は、営業の感覚ではなく、過去の商談の受注率をもとに、フェーズごとに設定します。
- 受注率は、データが少ないうちは幅を持たせ、データが増えたら定期的に見直します。
- 入力のルールが担当者ごとにばらつくと精度が落ちるため、フォーマットと確度の定義を統一します。
CONSULTATION
自社の商談データから、着地予測を出せるかを確認します。
営業・経理・経営層が同じ画面で見られる仕組みについて、現在のExcelやCRMの状況をお聞きしたうえで、進め方をお話しします。
よくある質問
Q. 着地見込みの計算方法は?
A. 基本の式は「確定受注額 + 商談中の案件の金額 × 確度」です。確度は、商談の進捗のフェーズごとに、過去の受注率を参考に設定します。
Q. 着地予想の出し方で、注意すべき点は?
A. 確度の設定が主観的になりすぎないよう、過去の商談データに基づいた実績値を使うことが重要です。感覚的な確度の設定は、着地見込みの精度を大きく下げます。
Q. 着地見込みは、Excelでも作れますか?
A. 作成できます。ただし、営業担当者ごとに入力のルールがばらつくと精度が落ちるため、入力フォーマットを統一し、可能であれば営業ツールとの連携で自動集計する仕組みが望ましいです。
Q. 営業が確度を入力してくれるか、心配です。
A. 入力が形だけになる原因は、設計にあることが大半です。確度の区分を営業の言葉に合わせ、入力に1分以上かけさせない設計にします。営業に入力を強制するのではなく、入力した結果がすぐ自分の画面に返ってくる作りにするのが基本です。
Q. 既存のCRMやSFAを使ったまま、構築できますか?
A. 可能です。既存のCRMのデータをAPIまたはCSVで取り込み、その上に着地予測のロジックを乗せる構成が一般的です。既存の業務への影響を、最小限に抑えて設計します。
Q. 着地予測の精度は、どの程度になりますか?
A. 確度ごとの過去の受注率がどれだけ蓄積されているかと、確度の入力の質に左右されます。最悪・標準・最良の3つのシナリオで幅を見せることで、数字のぶれを前提にした経営判断ができます。
Q. 構築の期間と費用の目安は?
A. 業務の複雑さと、既存のExcelやCRMの状況によって変わります。まず相談で現在の運用を伺い、進め方と概算をお伝えします。相談したからといって、契約する義務はありません。
NEXT STEP
この課題を、解決するまでの流れ
STEP 1
課題を知る
この記事で、状況を整理しました。
STEP 2
判断材料を集める