「kintoneを導入したんですが、正直あまり使えていなくて」。
その言葉を、ここ数年で何度聞いたかわからない。Salesforceのこともある。Notionのこともある。ツールの名前は変わっても、「導入したけど使えていない」という話の構造は同じだ。
これは、ツールが悪いわけではない。kintoneもSalesforceも、よくできたプロダクトだ。使いこなしている会社も世の中にはたくさんある。問題は別のところにある。
パッケージツールが求めるもの
kintoneやSalesforceのようなパッケージ型のツールは、「多くの会社に共通する業務の型」をベースに設計されている。営業管理ならこういう流れ、顧客管理ならこういう項目——という「標準的な業務プロセス」が内部に組み込まれている。
これを使いこなすには、基本的に二つの道がある。
ひとつは、ツールのカスタマイズ機能を使いこなして、自社の業務フローに近づける道だ。kintoneにはプラグインがあり、Salesforceにはフローという自動化機能がある。これを駆使すれば、ある程度自社に合わせることができる。でも、これには専任の担当者か、外部の支援が必要だ。設定できる人間がいない会社では、標準のままで使うことになる。
もうひとつは、自社の業務をツールの型に合わせる道だ。「このツールの使い方に合わせて、うちの業務フローを変えよう」というアプローチだ。この二番目の道が、中小企業にとって難しい。
長年かけて作った「うちのやり方」がある
10年、15年と事業を続けてきた会社には、独自のやり方が必ずある。
特定の取引先には見積もりを出す前に確認の電話を入れる、月末の受注は翌月に計上する、在庫の数え方は業界の慣習と少し違う——そういう「うちの会社ならでは」のルールが、あちこちに存在する。
これは非効率に見えることもあるが、多くの場合、それなりの理由がある。取引先の性格を踏まえた判断だったり、スタッフが混乱しないための取り決めだったり。長年の試行錯誤で生き残ってきた「うちのやり方」だ。
パッケージツールは、そのやり方を知らない。標準的な業務フローに合わせることを求めてくる。カスタマイズで対応できる範囲なら問題ないが、「標準から外れた部分」がツールで扱えない状態になると、現場のスタッフは困る。
「ツールでできないから、この処理だけExcelでやっています」——こういうことが増えると、ツールとExcelの二重管理になる。どちらが正しいかわからなくなる。スタッフは混乱する。結果として、ツールへのログイン回数が減っていく。
「使いこなせなかった」の本当の意味
「使いこなせなかった」という言葉は、自分たちの努力が足りなかったという意味に受け取られがちだ。でも実際には、ツールと業務フローの間に根本的なズレがあったということが多い。努力の問題ではなく、設計の問題だ。
万人向けに設計されたツールが、自社の固有の業務フローに合わないことは、ある意味で当然のことだ。ツールを否定しているわけではない。そのツールが向いている会社と、そうでない会社がある、ということだ。
自社のやり方を残したまま、システム化するという選択
パッケージツールとは別の道がある。自社の業務フローを起点に、それに合わせてシステムを作るという方法だ。既製服ではなく、オーダーメイドに近い考え方だ。「うちはこういう順番でこういう処理をしている」という現実に合わせて、画面と機能を作る。ツールに業務を合わせるのではなく、業務にシステムを合わせる。
これは費用がかかると思われることが多いが、「使われないパッケージツールの月額費用を2年払い続けた」ことと比べると、どちらが本当にコストが高いかは、一概には言えない。
kintoneやSalesforceを試してみて、うまくいかなかった経験があるなら、それは失敗ではなく「自社には別のアプローチが必要だ」という発見だったかもしれない。
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