【中小企業向け】経理業務の課題トップ5と解決策
「うちの経理は、本当に大変で…」
中小企業の経営者や経理担当者の方から、そんな声を聞くことがよくあります。大企業のように潤沢な予算や人員があるわけではない。経理専門の担当者が一人だけ、あるいは他部署と兼任している、なんてことも珍しくありません。
目の前の業務をこなすだけで精一杯。気づけば、残業は当たり前になり、特定の担当者しか業務内容を把握していない「属人化」が深刻な問題に。
しかし、その「大変さ」は、あなただけが抱えている課題ではありません。実は、多くの中小企業が共通して直面している、普遍的な問題なのです。
今回は、中小企業が抱えがちな経理業務の課題を5つに絞り込み、それぞれに対する現実的な解決策をご紹介します。あなたの会社がどの段階にいるのか、ぜひこの記事で確認してみてください。
中小企業が直面する経理業務の課題トップ5
1. 慢性的な残業と人手不足
「毎日、紙の請求書や領収書に埋もれている」
「月末の締め作業は、深夜までかかるのが当たり前」
中小企業の経理業務は、少人数で多岐にわたる業務をこなさなければならないため、慢性的な残業が発生しがちです。特に、月次決算や年次決算の時期は、その負担はピークに達します。人手不足の会社では、新しい人材を補充することも難しく、既存のメンバーに業務が集中し、疲弊していく悪循環に陥ります。
この課題の裏にあるもの
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非効率な手作業
紙ベースの作業や、Excelへの手入力・転記作業が多い。 -
複雑な業務フロー
「この場合はこうする」という例外ルールが多く、業務が複雑化している。 -
不定期な業務量
月末や四半期末など、特定の時期に業務が集中する。
2. 業務の「属人化」
「あの人がいないと、この仕事は誰もできない」
特定の経理担当者しか業務の進め方を知らない、あるいは特定のExcelファイルしか扱えない。これは、多くの中小企業でよく見られる「属人化」の問題です。担当者が急に休職したり、退職したりした場合、業務がストップしてしまうリスクを常に抱えることになります。また、業務がブラックボックス化するため、改善の機会を失い、非効率な手順が温存されてしまいます。
この課題の裏にあるもの
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マニュアルの不在
業務の手順やルールが明文化されていない。 -
情報共有の不足
業務に必要な情報が特定の担当者のパソコンや頭の中にしかない。 -
教育体制の未整備
新しいメンバーが来たときに、OJT(On-the-Job Training)頼りになっている。
3. IT人材・リテラシーの不足
「新しいシステムを導入したいけど、誰も使いこなせないかも…」
中小企業にとって、ITを駆使した業務効率化は喫緊の課題ですが、そのための専門的な知識を持つ人材が社内にいない、あるいは外部の専門家に依頼する予算がない、というケースが少なくありません。新しいシステムを導入しても、使いこなせず結局従来のやり方に戻ってしまったり、導入自体を諦めてしまうこともあります。
この課題の裏にあるもの
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予算の制約
高価なシステムや、外部コンサルタントへの依頼が難しい。 -
既存従業員の心理的ハードル
新しいツールへの抵抗感や、「今さら覚えられない」という不安。 -
情報収集の不足
どのようなITツールが自社に最適か、情報が手に入りにくい。
4. 経営判断に必要な情報がタイムリーに得られない
「月次決算が遅れがちで、会社の現状がリアルタイムで把握できない」
経理の本来の役割は、会社の経営状況を正確に、そしてタイムリーに把握し、経営者に適切な情報を提供することです。しかし、日々の手作業に追われていると、数字の集計や分析にまで手が回らず、月次決算の締めが遅れてしまうことも。その結果、経営者は過去のデータに基づいてしか意思決定ができず、市場の変化に対応できなくなるリスクを抱えます。
この課題の裏にあるもの
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データ集計の非効率
手作業によるデータ転記や集計が多く、時間がかかる。 -
レポート作成の属人化
特定の担当者しか経営レポートを作成できない。 -
データの分断
営業データや在庫データなど、経理以外の情報と連携していない。
5. コンプライアンス・内部統制の不備
「不正やミスをチェックする仕組みが不十分」
中小企業では、経理部門が少人数であるため、不正やミスをチェックする仕組み(内部統制)が十分でない場合があります。特に、経理担当者が仕訳から支払いまで一貫して担当している場合、意図的な不正だけでなく、単純なミスも見過ごされやすくなります。これは、会社の信頼を大きく損なうリスクに直結します。
この課題の裏にあるもの
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職務分掌の未整備
一人の担当者が、承認から実行までを一貫して担当している。 -
チェック体制の不足
担当者以外の目が入る機会が少ない。 -
ルール・規定の未整備
経費精算や支払いに関する明確なルールがない。
5つの課題を乗り越えるための現実的な解決策
上記の課題に心当たりがあったとしても、ご安心ください。限られたリソースでも取り組める、現実的な解決策は存在します。
1. 業務の標準化と「可視化」
まずは、誰でもできる業務へと変えることから始めましょう。
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業務フローの棚卸し
経理業務を「見える化」しましょう。どのような作業があり、誰が、いつ、何のために行っているのかを、紙やExcelに書き出してみてください。これだけで、無駄な作業や属人化している部分が浮き彫りになります。 -
マニュアル作成
業務フローを元に、簡単なマニュアルを作成します。これにより、担当者が変わってもスムーズに業務を引き継ぐことができます。
2. アウトソーシング(外部委託)の活用
「経理のプロ」に任せることも、有効な選択肢です。
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経理代行サービス
記帳代行や給与計算、請求書発行など、定型的な業務をアウトソーシングすることで、経理担当者はより付加価値の高い業務に集中できます。 -
専門家への相談
税理士や公認会計士に相談し、月次・年次決算や税務申告をサポートしてもらうことで、専門的な知識不足を補うことができます。
3. クラウドシステムの導入
高価なITツールではなく、中小企業向けの安価で使いやすいクラウドサービスを活用しましょう。
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クラウド会計ソフト
銀行口座やクレジットカードと連携し、仕訳を自動で作成してくれます。手入力の作業が大幅に削減されます。 -
経費精算システム
従業員がスマートフォンで領収書を撮影するだけで精算が完了。経理担当者の確認作業も効率化されます。 -
請求書発行システム
請求書の発行から送付、入金管理まで自動化できます。
ポイント: 最初から全てをデジタル化しようとせず、「まずは経費精算だけ」「まずは請求書発行だけ」と、スモールスタートで始めることが成功の鍵です。
まとめ:あなたの会社も変われる
中小企業が抱える経理業務の課題は、決して解決できないものではありません。
今回ご紹介した5つの課題を認識し、自社がどの段階にいるかを確認することは、改善への大きな第一歩となります。
「残業が当たり前」「あの人がいないと…」と諦める前に、まずは業務の可視化から始めてみてください。そして、無理のない範囲で、アウトソーシングやクラウドシステムの導入を検討してみましょう。
小さな一歩が、経理業務を効率化し、ひいては会社の成長を加速させる大きな力となります。
「大変な経理」から、「会社を動かす経理」へ。あなたの会社も、きっと変われます。