新規事業開発での市場ニーズの見つけ方と調査方法

新規事業を立ち上げたいけれど、何から手をつけていいかわからない。そんな時、多くの人が思いつくのが「市場調査」ではないでしょうか。しかし、「市場調査=アンケートやインタビュー」というイメージだけで始めてしまうと、表面的な答えしか得られず、事業の成功には結びつきにくいのが現実です。

顧客は、自分たちが本当に求めているものを正確に言語化できるとは限りません。彼らが口にする「欲しい」という言葉の裏に隠された、本当のニーズ(インサイト)をどう見つけ出すか。それが、失敗しない新規事業の第一歩なのです。

このコラムでは、顧客自身も気づいていない本質的なニーズを見つけ出すための、より実践的な市場調査の方法について、具体的なアプローチを交えながら解説します。

なぜ、アンケートやインタビューだけでは不十分なのか?

「新しいアプリを開発するなら、どんな機能が欲しいですか?」
「このサービスにいくらならお金を払いますか?」

このような直接的な質問は、顧客の顕在ニーズ(すでに自覚しているニーズ)を探る上では有効です。しかし、そこから得られるのは、既存の枠組みの中で考えられた、予測可能な答えばかりです。

例えば、iPhoneが世に出る前、人々は「もっと高性能な携帯電話が欲しい」とは言っても、「タッチパネルで操作する、インターネットに常時接続されたデバイスが欲しい」と具体的に答えることはありませんでした。なぜなら、彼らにとってそれはまだ未知の領域だったからです。

本当にイノベーションを起こす新規事業は、顧客自身が気づいていない潜在ニーズ、つまり「こうなったらいいな」と心の奥底で思っているけれど、うまく言葉にできないインサイトを発見することから生まれます。

顧客インサイトを見つけ出す「多角的なアプローチ」

潜在ニーズは、直接質問しても出てきません。顧客の行動や感情、そして彼らを取り巻く環境を多角的に観察することで、その奥に潜むインサイトを探し出す必要があります。

1. 顧客の「行動」を観察する

アンケートやインタビューで「何が欲しいか」を聞くのではなく、「どういう行動をしているか」を観察することから始めましょう。

  • 行動観察: 顧客がサービスや商品を使う様子を、静かに観察します。どんな時に困っているか、どんな工夫をしているか、どんな表情をしているか、そこにインサイトのヒントが隠されています。
    例:「カフェでノートPCを広げた人が、電源を探してキョロキョロしている」→「電源コンセントの不足」という課題が見つかる
  • 日記法: 顧客に数日間、日々の行動や感情、気づきなどを日記につけてもらいます。日常の些細な「モヤモヤ」や「ハッピー」な瞬間が、潜在ニーズの宝庫です。
2. 顧客の「言葉」の裏側を読む

直接的な質問は避けるべきですが、顧客との会話はインサイト発見に不可欠です。重要なのは、言葉の表面だけでなく、その背景にある感情を読み解くことです。

  • 共感と深掘り: 顧客が発した言葉に対し、「なぜそう思ったのですか?」と繰り返し問いかけ、本質的な理由を探ります。
    顧客:「このサービス、ちょっと使いにくいんですよね…」
    あなた:「どの部分が使いにくいと感じましたか?」
    顧客:「…なんか、画面がごちゃごちゃしてて、どこを押せばいいかわからないんです。」
    あなた:「なるほど。では、もしシンプルになったら、どんな風に変わると思いますか?」
  • 感情マップ: 顧客がサービス利用中に感じる「不満」「不安」「喜び」といった感情を時系列でマッピングします。感情が大きく動くポイントに、解決すべき課題や新しい価値のヒントが隠されています。

リアルタイムな情報源から「需給ギャップ」を探る

1. SNS分析
  • キーワード検索: ターゲット顧客が使いそうなキーワード(例:「〇〇 使い方」「〇〇 困った」「〇〇 レビュー」)で検索し、不満や課題の投稿を収集します。
  • ハッシュタグ分析: 特定のテーマに関するハッシュタグ(例:「#子育てあるある」「#転職悩み」「#リモートワーク」)を追うことで、潜在的なコミュニティや課題を発見できます。
  • 感情分析: 投稿内容をAIで感情分析することで、特定のトピックに対する人々の感情の傾向(ポジティブ/ネガティブ)を把握できます。
2. 検索データ分析

Googleトレンドやキーワードプランナーといったツールを活用することで、人々が何に興味を持ち、何を解決しようと検索しているかを可視化できます。

  • 検索ボリュームの推移: 特定のキーワードの検索ボリュームが急上昇している場合、その分野で新しいニーズが生まれている可能性があります。
  • 関連キーワード: 関連キーワードやサジェストキーワードを分析することで、顧客が次に何を求めているか、その背景にあるニーズを推測できます。

アイデアをカタチにするための「検証プロセス」

顧客インサイトや需給ギャップから生まれたアイデアは、まだ仮説に過ぎません。その仮説が本当に正しいかどうかを、小さく、素早く検証するプロセスが重要です。

1. プロトタイプ(試作品)でフィードバックを得る

完璧な製品を作る前に、MVP(Minimum Viable Product: 顧客に価値を提供できる最小限の機能を持つ製品)や、クリックできるだけの簡単な画面、紙に書いたラフスケッチなどでも構いません。実際に顧客に使ってもらい、フィードバックを得ることで、アイデアの「ツボ」を磨き上げることができます。

2. プレ・マーケティングで反応を測る

製品開発に入る前に、クラウドファンディングで資金調達を行ったり、SNSでコンセプト動画を公開したりして、市場の反応を測ります。

  • 「いいね!」やコメントの数、シェアされた数、予約注文の数など、具体的なアクションを指標にすることで、顧客の興味関心の度合いを正確に把握できます。

最後に

「市場調査」は、単なるデータ集計作業ではありません。それは、顧客の心に寄り添い、彼らの「言えない想い」を解き明かす探求の旅です。

アンケートやインタビューといった伝統的な手法に加え、SNSや検索データといった現代的なツールを駆使し、顧客の「行動」「言葉の裏側」を深く掘り下げること。そして、そのインサイトを基に、小さな検証を繰り返すこと。

そうすることで、顧客自身も気づいていない本質的なニーズを捉え、誰もが欲しがる、そして失敗しない新規事業の第一歩を踏み出すことができるのです。あなたのビジネスの成功を心から願っています。

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