事業計画書作成で絶対に外せない3つの項目

素晴らしいアイデアは、熱意だけでは実現しません。その熱意を、冷静なロジックと具体的な数字で裏付けた「事業計画書」があって初めて、資金が動き、人が集まり、プロジェクトが始動します。

事業計画書は、単なる申請書類ではありません。それは、あなたの夢の実現可能性を、社内の経営層や外部の投資家に証明するための「プレゼンテーション」であり、事業の航海における「羅針盤」です。

しかし、多くの新規事業担当者は、事業計画書の作成を「面倒な作業」として捉えがちです。「製品のすごさ」ばかりにページを割き、最も重要な財務面や実行計画が手薄になるケースが後を絶ちません。

「どうすれば、説得力のある事業計画書が作れるのか?」

このコラムでは、新規事業のプロが教える、事業計画書作成で絶対に外せない3つの項目を詳細に解説します。これらの核心を理解することで、あなたの計画書は一気に説得力を増し、事業承認の壁を突破する力となるでしょう。

経営者と投資家が最も注目する3つの核心項目

事業計画書には、製品概要や市場分析など、多くの項目が含まれますが、最終的な意思決定者である経営層や投資家が最も時間をかけてチェックするのは、以下の3つの項目です。これらは、事業の「生存可能性」「成長性」「実行力」を測る、最も重要な指標だからです。

  1. 収支計画(事業の生存可能性)

  2. 投資計画(成長の加速力)

  3. 人員計画(実行の基盤)

1.収支計画:夢物語を現実に変える「数字の力」

収支計画は、あなたの事業が「いつ、どれだけ儲かるのか」を予測する、事業計画書の心臓部です。ここが曖昧だと、どんなに素晴らしいアイデアも「夢物語」として一蹴されてしまいます。

収支計画で外せないポイント
1. KGIとKPIに基づいた収益構造

あなたの事業のKGI(最終目標)を起点に、そこに至るまでの道筋をKPI(重要業績評価指標)で具体的に示します。


  • 「3年後に売上1億円」というKGIに対し、「そのためには、月間〇〇件の顧客獲得が必要で、Webサイトのコンバージョン率は〇〇%が必須」といったように、売上を分解して説明します。

売上が、感情的な希望ではなく、具体的なKPIの積み上げによって成り立っていることを証明しましょう。

2. コスト構造の「現実」を直視する

新規事業は、最初のうちは赤字が続くことが一般的です。重要なのは、赤字を隠すことではなく、「いつ、黒字化するのか」という明確な予測を示すことです。

  • 変動費: 売上に応じて変動するコスト(原材料費、仕入れ費、販売手数料など)

  • 固定費: 売上に関わらず発生するコスト(人件費、家賃、サーバー代など)

特に、立ち上げ初期は人件費(固定費)が収益を圧迫します。コストを過小評価せず、最も悲観的なシナリオ(売上が伸びない場合)でも、どこまで耐えられるかというシミュレーションを行いましょう。

3. 資金ショートのタイミングを明示する(キャッシュフロー)

収支計画で最も重要なのは、利益が出ているかではなく、「キャッシュフロー(資金の流れ)」です。

「売上は出ているのに、なぜか手元の現金がない」という黒字倒産は、新規事業の失敗原因の多くを占めます。

  • 入金と出金のタイミングのズレ(例:売上が立っても、入金は3ヶ月後、支払いは今月)を正確に予測し、「資金が底を尽きる(資金ショート)時期」を明確にします。

  • この資金ショートを防ぐために、「いつまでに」「どれだけの」資金調達が必要なのか、その根拠を示しましょう。

投資計画:成長を加速させる「使い道の論理」

投資計画は、「集めたお金を何に使うのか」を示すだけでなく、「その投資が、どれだけのリターンを生み出すのか」という論理的な根拠を示す項目です。投資家は、あなたの事業が「資本効率が良いか」を見ています。

2.投資計画:成長を加速させる「使い道の論理」

投資計画は、「集めたお金を何に使うのか」を示すだけでなく、「その投資が、どれだけのリターンを生み出すのか」という論理的な根拠を示す項目です。投資家は、あなたの事業が「資本効率が良いか」を見ています。

投資計画で外せないポイント
1. 投資対効果(ROI)の明確化

すべての投資項目(例:サーバー導入、広告出稿、人材採用)について、「この投資によって、どれだけの売上増やコスト削減が見込めるのか」というリターンを数値で示します。


  • 〇〇万円の広告費を投下することで、見込み顧客を〇〇人獲得し、そのうち〇〇%が成約することで、〇〇万円の売上増が見込める。

単なる費用ではなく、未来の収益を生み出すための「先行投資」であることを強調しましょう。

2. 設備投資と運転資金の区別

資金使途を、設備資金(一度の大きな投資)と運転資金(日常的な費用)に明確に分けます。

  • 設備資金: サーバー、機械、オフィス内装など。

  • 運転資金: 人件費、家賃、仕入れ、広告費など。

特に、創業融資を受ける際など、金融機関は「運転資金」よりも、事業の基盤となる「設備資金」への融資を好みやすい傾向があります。使途の論理的な妥当性が求められます。

3. 資金調達の「最適な組み合わせ」

必要な投資総額に対し、自己資金、融資、出資、補助金など、どの資金調達方法を、どのタイミングで、どれだけの割合で組み合わせるのかという戦略を示します。


「初期のリスクが高い段階では、返済義務のない補助金を活用し、事業が軌道に乗った段階で、成長を加速させるためのVCからの出資を検討する」といった具体的な戦略が必要です。

3.人員計画:アイデアを実行に変える「チームの設計図」

どんなに完璧な計画があっても、それを実行する人がいなければ意味がありません。人員計画は、事業の成功に必要な「人的リソースの設計図」であり、経営者の「チームビルディング能力」を示す項目です。

人員計画で外せないポイント
1. 組織図とコアメンバーの紹介

事業の立ち上げから成長フェーズまでの組織図(誰が、誰に報告し、どんな役割を担うか)を明確に示します。

  • 特に、コアメンバー(創業メンバー)については、過去の経験やスキルが、この新規事業の成功に不可欠であることを具体的に説明します。
2. 採用計画の根拠

「いつまでに」「どんなスキルを持つ人材を」「何人」採用する必要があるのかを、収支計画と連動させて説明します。


  • Webサイトの改修が必要なため、〇ヶ月目までにフロントエンドエンジニアを1名採用する。人件費は月額〇〇万円で、その費用は収支計画に組み込んである。

採用計画が、感情論ではなく、事業の成長に必要な必然性に基づいて立てられていることを示しましょう。

3. 評価とインセンティブの設計

新規事業担当者のモチベーションを維持するための、人事評価制度についても言及します。


  • 「短期的な売上だけでなく、仮説検証のサイクル数といったプロセス評価を取り入れる」「事業成功時には、ストックオプション型のインセンティブを提供する」

既存事業の評価制度とは異なる、新規事業に特化した評価制度の設計が、優秀な人材の確保と定着に不可欠です。

最後に:事業計画書は「対話」のツール

事業計画書は、一度作成したら終わりではありません。それは、経営層や投資家との「対話」を始めるための招待状です。

彼らは、あなたの計画書を通じて、以下の問いに答えてくれることを期待しています。

  • 生存可能性
    この事業は、リスクを乗り越え、自己資金で立ち直れるか?

  • 成長性
    この投資は、既存事業よりも大きなリターンを生み出すか?

  • 実行力
    このチームは、計画を現実のものにするだけの能力と情熱を持っているか?

この3つの核心項目を、冷静なロジックと具体的な数字で固めることが、あなたの情熱を確実な成功へと導く第一歩となるでしょう。さあ、あなたの夢を、説得力のある事業計画書に落とし込み、承認の壁を突破しましょう。

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