経理業務の業務フローを見直す

無駄な作業を特定するチェックリスト

「なぜ、こんなに時間がかかるんだろう…」

月末の締め作業、決算期の多忙な日々。ふと、そう感じたことはありませんか? 目の前の作業をただこなすことに精一杯で、「なぜこの作業が必要なのか」「もっと効率的な方法はないのか」と考える余裕もない。

しかし、その「目の前の作業」にこそ、あなたの貴重な時間と会社のコストを蝕む「無駄」が潜んでいるかもしれません。

業務フローが複雑化する3つの原因

日々の業務フローは、意図せずして複雑化していきます。その背景には、主に3つの要因が考えられます。

  1. 「とりあえず」の場当たり的対応
    現場で発生した小さな問題に対し、その都度、新しい手順やルールを追加していくうちに、業務フロー全体が複雑に絡み合ってしまうケースです。「このケースだけは、このExcelに手入力する」「この取引先には、特別な書式で請求書を発行する」といった例外ルールが、業務の非効率を生み出します。

  2. 属人化
    特定の担当者しかやり方を知らない、あるいは特定の担当者しかできない業務があると、その人のやり方が「正しい手順」として定着し、改善の機会を失います。業務フローがブラックボックス化し、誰も手出しできなくなるのです。

  3. 過去の慣習
    「昔からこうやっているから」という理由で、すでに不要になった作業が惰性で続けられていることもよくあります。法改正やツールの進化によって必要性がなくなった作業でも、誰も見直すことなく引き継がれてしまうのです。

これらの要因が絡み合い、まるで古いコードのように複雑で読みにくい業務フローが出来上がってしまうのです。その結果、残業は増え、人的ミスは多発し、経理担当者の疲弊はピークに達します。

経理業務の「無駄」を見つけ出すチェックリスト

では、どうすればこの複雑な業務フローを解きほぐすことができるのでしょうか? まずは、あなたの業務を客観的に見つめ直すための「チェックリスト」を活用しましょう。以下の項目を、経理業務の主要なプロセスごとに分解し、あなたの現在の業務に当てはめてみてください。

1. 仕訳・記帳業務
  • 二重入力が発生していませんか?

    • 例:紙の伝票を見て会計ソフトに入力し、その後別のExcelにも同じデータを入力している。

  • 紙の書類から手入力していませんか?

    • 例:請求書や領収書を目視で確認し、手動で会計ソフトに仕訳を登録している。

  • 特定の担当者しかできない作業はありませんか?

    • 例:複雑な仕訳処理や、Excelマクロを使った集計作業を特定の担当者しか行えない。

2. 請求書発行・売掛金管理業務
  • 請求書のフォーマットは統一されていますか?

    • 例:取引先によって異なるフォーマットの請求書を手動で作成・調整している。

  • 郵送作業に時間がかかっていませんか?

    • 例:請求書を印刷、三つ折り、封入、切手を貼り付けている。

  • 入金消込作業は手作業で行っていませんか?

    • 例:銀行の入金明細と売掛金台帳を一件ずつ目視で確認し、消し込んでいる。

3. 経費精算業務
  • 申請・承認に紙の書類を使っていませんか?

    • 例:従業員が紙の経費精算書を作成し、上司がそれに印鑑を押して回している。

  • 領収書と精算書の突き合わせ作業に時間がかかっていませんか?

    • 例:提出された領収書と精算書の内容を一件ずつ手作業で確認している。

  • 従業員への精算金の支払いは手作業で行っていませんか?

    • 例:経費精算が完了した金額を、振込データに手入力している。

4. 支払い・買掛金管理業務
  • 振込データの作成に手作業を使っていませんか?

    • 例:支払予定一覧のExcelを見ながら、銀行のWebサイトに一件ずつ振込情報を入力している。

  • 支払調書や源泉徴収票の作成は手作業ですか?

    • 例:フリーランスや弁護士への支払いについて、手作業で支払調書を作成している。

5. 決算・月次締め業務
  • 月次決算の集計作業に多くの時間を割いていませんか?

    • 例:各部門から送られてくるExcelデータを手動で集計し、集計漏れがないか確認している。

  • 部門別の損益計算書作成に時間がかかっていませんか?

    • 例:会計ソフトからデータを抽出し、部門別のExcelシートに手入力で転記している。

チェックリストで特定した「無駄」への改善策

上記のチェックリストで「非効率だ」「無駄だ」と感じた項目があれば、それは改善の「種」です。これらの種を、具体的な改善策へと育てていきましょう。

1. 簡素化(Simplify):ルールと手順をシンプルに
  • 例外をなくす
    「このケースだけは…」というルールを見直し、基本となるルールを全ての業務に適用できるように統一します。

  • フォーマットを統一する
    請求書や経費精算書のフォーマットを統一し、作成・確認作業の手間をなくします。

  • マニュアル化する
    特定の担当者しかできない業務をマニュアル化し、誰でもできるようにすることで属人化を解消します。

2. 自動化(Automate):ITツールに任せる
  • 会計ソフトとの連携
    銀行口座やクレジットカードを会計ソフトと連携させ、入出金明細の自動取り込みや仕訳の自動生成を行います。

  • RPA(Robotic Process Automation)の活用
    複数のExcelシート間のデータ転記や、定型的なデータの入力作業をロボットに任せます。

  • AI-OCRの導入
    請求書や領収書をスキャンするだけで、必要な情報を自動で読み取り、データ化します。

3. アウトソーシング(Outsource):プロに任せる
  • 経費精算の外部サービス利用
    経費精算サービスを導入し、従業員がスマホで領収書を撮影するだけで精算が完了する仕組みを構築します。

  • 請求書発行代行サービス
    請求書の発行から郵送、さらには入金確認までを外部のサービスに任せることで、バックオフィス業務を大幅に削減できます。

これらの改善策は、一つひとつが独立しているわけではありません。例えば、経費精算システムを導入して自動化することで、紙の精算書を「簡素化」し、経理担当者の確認作業を「アウトソーシング」することにも繋がります。

まとめ:経理は「守り」から「攻め」の部門へ

業務フローを見直すことは、単に手間を省くためだけではありません。

「無駄な手作業」をなくし、「非効率なフロー」を改善することで、経理担当者は、会社の未来を考えるという、本来の「攻め」の役割に集中できるようになります。

たとえば、数字を分析し、経営層に対してコスト削減や利益向上に向けた提案を行ったり、事業計画の策定に積極的に関わったりすることができます。

本記事で提示したチェックリストは、そのための第一歩です。ぜひこの機会に、ご自身の業務を「何のために、どうやっているのか」という視点で見つめ直し、改善の糸口を見つけてみてください。

あなたの経理業務は、もっとシンプルに、もっと効率的に、そしてもっと面白くなるはずです。

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