経理部門への問い合わせを減らすには?

社内FAQシステムの活用術

「あの…この領収書、経費になりますか?」

「支払いの申請、どうやったらいいんでしたっけ?」

経理担当者の方なら、日に何度もこうした「内線やメールでの問い合わせ」を受けているのではないでしょうか。

これらの問い合わせは、一つひとつは数分で終わるものかもしれません。しかし、一日に何度も中断されれば、集中力は途切れ、本来やるべきコア業務は夜に持ち越され、気づけば残業の山となります。

経理部門にとって、この「問い合わせ対応」こそが、時間と集中力を蝕む最大の敵なのです。

問い合わせ対応がもたらす「見えない残業」

問い合わせ対応が経理部門にもたらす悪影響は、単に「時間が取られる」だけではありません。

1. 集中力の途切れによるミスの誘発

経理業務は、高い集中力と正確性を求められます。しかし、作業中に何度も電話やメールで中断されると、集中力が途切れ、作業再開時にヒューマンエラーを引き起こしやすくなります。特に、複雑な仕訳処理やデータ入力中に中断されると、ミスの発生率は高まります。

2. 回答のバラつきによる混乱

問い合わせが口頭や個人のメールで行われる場合、担当者によって回答の内容やニュアンスが微妙に異なってしまうことがあります。これにより、社内で「あの人はOKと言ったのに、この人はダメだと言われた」といった混乱や不公平感を生み出す原因になります。

3. ノウハウの蓄積がされない

同じ質問に何度も答えているのに、そのノウハウが個人の頭の中に留まっているため、新しく入った担当者はまた一から同じ質問に対応しなければなりません。これは、知識が組織の「資産」として蓄積されていない、属人化の典型的な状態です。

これらの問題を根本的に解決し、経理担当者を問い合わせの呪縛から解放するための切り札が、「社内FAQ(よくある質問)システム」の活用です。

社内FAQシステムが問い合わせ対応を効率化する仕組み

社内FAQシステムは、単なるマニュアルの置き場所ではありません。それは、経理の知識を「会社の共有資産」に変え、従業員が自分で問題を解決できる「セルフサービス」の仕組みを提供します。

1. 質問と回答の一元管理

FAQシステムは、これまで個人のメールやチャットの中に散らばっていた質問と回答を、一箇所に集約します。

  • 検索性の向上
    従業員は「領収書」「旅費」「振込」といったキーワードで検索するだけで、瞬時に正しい回答にたどり着けます。

  • 回答の統一
    公式な回答が一つに定まるため、担当者による回答のバラつきがなくなり、社内のルールが徹底されます。

2. 問い合わせ件数の削減

FAQが充実することで、従業員は経理部門に問い合わせる前に、まずFAQを検索する習慣がつきます。これにより、経理部門に届く問い合わせは、FAQでは解決できない「本当にイレギュラーな問題」「複雑な問題」だけに限定されます。定型的な質問対応の時間が大幅に削減され、コア業務に集中できるようになります。

3. 新人教育の自動化

FAQシステムは、新入社員や異動者が、経理の基本ルールを自分で学べる「教材」になります。先輩社員がつきっきりで教えるOJT(On-the-Job Training)の時間を大幅に減らし、新担当者の早期戦力化をサポートします。

どのような情報をFAQにまとめるべきか?

FAQシステムを成功させるには、「何を、どのように書くか」が重要です。経理部門がまずFAQにまとめるべき情報は、以下の3つのカテゴリーに分類できます。

カテゴリー1:頻出する「基本ルールと例外」

最も問い合わせが多い、日常的なルールに関する情報です。

  • 経費精算

    • 領収書がない場合の対応は?

    • 交通費の精算方法は?(Suica、タクシーなど)

    • 飲食費の上限金額はいくらまでか?

  • 請求書

    • 請求書の発行依頼は、いつまでに、誰に、どのフォーマットで出せばいいか?

    • 宛名や日付を間違えた場合の修正手順は?

  • 支払い

    • 支払申請の締め切りはいつか?

    • 振込先の変更手順は?

カテゴリー2:プロセスに関する「ハウツーとマニュアル」

具体的な手順や操作方法に関する情報です。

  • システム操作
    経費精算システムや稟議システムへのログイン方法、申請書の入力手順をスクリーンショット付きで解説。

  • 書類の処理
    請求書や契約書の「提出先」「保管場所」を明記し、誰が何をするのかをフローチャートで図解する。

  • 勘定科目
    よく使われる勘定科目(例:備品消耗品費、会議費など)の具体的な定義と、仕訳のルールを解説。

カテゴリー3:法改正やポリシーに関する「最新情報」

組織全体に関わる、変更や注意が必要な情報です。

  • 法改正対応
    インボイス制度、電子帳簿保存法など、最新の法改正情報と、社内での具体的な対応手順。

  • 会社のポリシー
    部署ごとに異なる独自の経費ルールや、会社が推奨するツールの利用方法。

FAQシステムを成功させるための運用術

ツールを入れるだけでは、問い合わせは減りません。FAQシステムを「生きた知識」として維持するための運用ルールを徹底しましょう。

1. 問い合わせを「FAQ作成のネタ」にする

「また同じ質問か」とイライラするのではなく、「これはFAQに載せるべきネタだ」と考え方を変えましょう。

  • 「FAQファースト」の徹底
     経理担当者は、問い合わせが来たら「まずFAQを検索してもらう」ことを徹底します。回答する際も、「この回答はFAQの〇〇に詳しく載っています」と、FAQへの導線を示すようにしましょう。

  • 未掲載質問の即時対応
    新しい質問が来たら、回答と同時にFAQに追記するルールを徹底します。これにより、同じ質問に二度と答える必要がなくなります。

2. 「オーナー」を決めて最新情報を維持する

マニュアルやFAQは、「情報の鮮度」が命です。古い情報が載っていると、誰も信用しなくなり、システムは使われなくなります。

  • 情報オーナーの任命
    各カテゴリ(例:経費精算、支払い)ごとに「情報オーナー」を決め、そのオーナーが年に一度、あるいは法改正時に情報が最新であることを確認・更新する義務を持たせましょう。

  • 「最終更新日」の明記
    FAQの記事には、必ず最終更新日を明記しましょう。これにより、利用者はその情報が最新であるかを確認でき、信頼性が高まります。

3. 検索ログを分析し、改善を続ける

FAQシステムには、従業員が「何を検索したか」「どの記事がよく見られているか」といった「検索ログ」が残ります。

  • 検索失敗キーワードの把握
    検索しても記事が見つからなかったキーワードを分析し、そのキーワードに対応する記事を作成したり、既存の記事のタイトルやタグを改善したりしましょう。

  • 人気記事の分析
    よく見られている記事は、それだけ関心が高いということです。その内容をさらに詳しく、わかりやすくすることで、より深いセルフサービスを促すことができます。

まとめ:経理の未来は「教える」から「提供する」へ

経理部門への問い合わせを減らすことは、単なる残業削減策ではありません。

それは、経理担当者が定型的な「教える作業」から解放され、知識を「提供する役割」へと進化するための、大きな一歩です。

社内FAQシステムを活用し、知識を共有資産として組織に根付かせることで、あなたの部署は、より効率的で、より戦略的な仕事に集中できるようになります。

「また電話だ…」とため息をつく日々から卒業するために、今日からFAQシステムの構築を検討してみませんか?

あなたの時間の価値は、もっと高くなるはずです。

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