経理業務におけるタスク管理術
見落としと残業をなくす方法
「あの仕事、どうなったんだっけ?」
「あ、今日が締め切りだった!」
経理部門にいると、毎日がタスクの洪水です。日々こなすべきルーチン業務に加え、突発的な依頼や問い合わせが飛び交う。月末月初の締め作業や、四半期ごとの決算業務は、まさに時間との戦いです。
このタスクの洪水を前に、どうすれば抜け漏れなく、効率的に業務をこなせるのでしょうか?
その鍵は、「タスク管理」です。
単なる「やることリスト」ではなく、あなたの仕事をコントロールし、見落としや残業をなくすための強力な武器。今回は、経理業務に特化した、実践的なタスク管理術をご紹介します。
なぜ、経理にタスク管理は必須なのか?
タスク管理は、全てのビジネスパーソンにとって重要ですが、経理部門においては、特にその重要性が高まります。その理由は、以下の2つにあります。
1. 業務の「波」が大きすぎる
経理業務には、明確なサイクルがあります。
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日次: 振込や入出金確認、経費精算の受付など
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週次: 請求書の発行、経費精算の承認など
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月次: 請求書や売掛金・買掛金の締め、給与計算、月次決算など
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年次: 年次決算、税務申告など
この業務の「波」を把握し、事前に準備できなければ、月末月初の業務集中による残業は避けられません。タスク管理は、この波を予測し、平準化するための羅針盤となります。
2. 「見落とし」が会社の信用を揺るがす
経理業務における見落としは、単なるミスの範疇を超えます。支払漏れは取引先の信用を失わせ、請求漏れは会社の資金繰りに影響を与えます。タスク管理は、これらの「致命的なミス」を未然に防ぐための、最後の砦なのです。
経理業務のタスクを「見える化」する3つのステップ
タスク管理の第一歩は、頭の中にあるタスクを全て「見える化」することです。以下の3つのステップで、あなたの仕事を整理してみましょう。
Step 1: タスクの洗い出し
まずは、どんなに小さなタスクでも、全て書き出してみてください。
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ルーチン業務
毎日、毎週、毎月必ず行う業務(例:日報作成、仕訳入力、振込処理) -
イレギュラー業務
突然発生する業務(例:問い合わせ対応、監査対応、システムトラブル対応) -
プロジェクト業務
期間を要するタスク(例:新しい会計ソフトの導入、業務マニュアルの作成)
この段階では、完璧である必要はありません。まずは、頭の中を空っぽにするイメージで、思いつくままに書き出しましょう。
Step 2: タスクの分類とグルーピング
次に、洗い出したタスクを「種類」や「担当者」ごとに分類します。
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業務プロセス別
「請求書関連」「経費精算関連」「給与計算関連」 -
担当者別
「自分がやるタスク」「チームメンバーに任せるタスク」 -
タイミング別
「月末月初にやるタスク」「決算期にやるタスク」
このようにグループ化することで、全体の業務フローが見え、「どのタスクに時間がかかっているか」や「どの業務が属人化しているか」を把握できるようになります。
Step 3: 優先順位付けとスケジューリング
最後に、分類したタスクに「優先順位」をつけます。
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重要度と緊急度で判断
「緊急かつ重要」「重要だが緊急ではない」「緊急だが重要ではない」の4つのマトリックスでタスクを分類します。多くの人は、「緊急だが重要ではないタスク」(例:急な問い合わせ)に時間を奪われがちです。ここにメスを入れることが、残業削減の第一歩です。 -
カレンダーアプリと連携
締め切りがあるタスクは、カレンダーアプリに登録しましょう。特に、毎月繰り返されるルーチン業務(例:月末締め)は、リマインダー設定をしておくと、忘れずに済みます。
あなたのタスク管理を助ける「ツール」の活用術
手帳やノートでのタスク管理も良いですが、経理業務の複雑なタスクを効率的に管理するためには、デジタルツールの活用が不可欠です。
1. カレンダーアプリ(例:Googleカレンダー)
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定期タスクの自動設定
毎月繰り返される業務(例:月次報告書の作成、請求書発行)は、リマインダー設定で自動的にカレンダーに追加されるように設定しましょう。 -
タスクと予定の連携
予定とタスクを同じカレンダーで管理することで、「この日は会議で忙しいから、このタスクは別の日にしよう」といった調整が容易になります。
2. タスク管理ツール(例:Trello, Asana)
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カンバン方式でタスクを可視化
Trelloのようなツールは、タスクを「未着手」「進行中」「完了」などのリストに分類し、カードのように動かして管理できます。これにより、タスクの進捗状況がチーム全体で一目でわかります。 -
タスクの割り当てと期日設定
各タスクに担当者と期日を設定し、誰が何をいつまでにやるべきか明確にしましょう。これにより、抜け漏れや「誰かがやるだろう」という属人化を防げます。 -
コメント機能でナレッジ共有
タスクに関するやりとりや、問題解決のノウハウをコメント機能で残しておけば、タスクが完了した後も貴重なナレッジとして蓄積されます。
3. メモアプリ(例:Evernote, Notion)
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プロジェクトのメモ
新しいプロジェクトや、イレギュラーな対応に関するメモを、関連タスクと紐付けて管理しましょう。 -
議事録とタスクの連携
会議の議事録で決まったタスクを、そのままタスク管理ツールに移行することで、タスクの実行漏れを防げます。
まとめ:タスク管理は「見落とし」と「残業」をなくす最強の武器
タスク管理は、単に「やること」をリストアップすることではありません。
それは、あなたの業務をコントロールし、「いつ」「何を」「なぜ」やるべきかを明確にするためのプロセスです。
そして、このプロセスを習慣化することで、月末月初の業務集中による焦りや不安から解放され、計画的に仕事を進められるようになります。結果として、見落としや抜け漏れは減り、残業も自然と削減されるでしょう。
経理業務は、会社の健全な運営を支える、非常に重要な仕事です。
その重要な仕事を、より確実に、そしてストレスなく進めるために、ぜひ今日からタスク管理を始めてみてください。
あなたの仕事は、もっとスマートに、もっと効率的になります。